LVS方式のバーコードグレーディングの解説:1D シンボル: 全体グレートと、各パラメーターのグレード
背 景
LVSバーコード検証システムのユーザーは、1Dシンボルについて報告された全体的なグレードが、パラメーターの最低グレードと同じではないことに気付くと思います。
多くの人は、全体グレードは、パラメータ-の最低グレードと同じでなければならないと信じているのではないでしょうか?しかし、それは1本のスキャンラインにのみ当てはまります。 即ち、1本のスキャンラインのグレードは、そのスキャンラインのみで算出したパラメーターの最低値です。 これにより、多くの人が、LVSグレーディング画面に表示される全体的なグレードが常にLVSグレーディング画面に表示される最低パラメーターグレードと等しくなることを期待しています。
最初に重要なのは、LVSグレーディング画面に表示されるパラメーターグレードが、個々のスキャンラインのパラメーターグレードではないことを理解していただくことです。 グレード画面に表示されるパラメーターの値は、全スキャンラインの平均です。 シンボルの高さ全体で見つかった全てのスキャンライン(場合によっては数百)の平均です。 LVSグレーディング画面に表示される全体グレードは、全ての最低スキャンライングレードの平均です。
より明確にしましょう。各スキャンラインのグレードは、そのスキャンラインのパラメーターグレードの中で最も低い値のパラメーターです。全体シンボルグレードは、その各スキャンライングレード(個々のスキャンラインごとのパラメーターグレードの最低値)の平均値です。 LVSグレーディング画面に表示されるパラメーターグレードは、そのパラメーター自体の平均値です。 したがって、スキャンライン毎のグレード最低値(全体的なシンボルグレード)の平均は、必ずしも、パラメーターごとの最低値の平均グレードと同じではありません。
当書は、LVSグレーディングレポートで報告されるパラメーターグレードと全体的なシンボルグレードの間に明確で直接的な関係が期待されるべきではないとくことを説明する為に作成しています。
このドキュメントは、ISO / IEC 15416、第2版(2016-12-15)で指定されているプロセスとアルゴリズムを利用しており、ISO / IEC 15416:2016(E)とも呼ばれます。このドキュメントで使用されている角括弧[]内の数字は、ISO / IEC 15416:2016(E)の特定のセクションを示しています。
1Dシンボルの全体グレード
1Dバーコードのグレーディングは、バーコードの幅全体にわたる多数のスキャン反射率プロファイル(SRP)を分析することから始まります。 ISO / IEC仕様では、バーコードごとに最低10個の等距離SRPを分析することが規定されています。[5.2.6]。 これは、ペンスタイルのレーザースキャナー(多くの場合、ワンドスキャナーと呼ばれる)を使用してSRPを作成する場合に、実用的な値として選択された最小値です。 LVS製品は、開発当初から、はるかに高解像度の画像キャプチャー機構を採用し、バーコードごとに通常、100本以上のSRPを分析しています。
それぞれの SRPは下記の7種類のパラメーターで計算される必要があります。[6.2]:
- デコード (Decode)
- シンボルコントラスト (SC)
- 最小反射率 (Rmin)
- 最小エッジコントラスト (ECmin)
- モデュレーション (MOD)
- ディフェクト (Defect)
- デコーダビリティ (V)
パラメーター シンボルコントラスト、モデュレーション、ディフェクト、デコーダビリティは、0.0から4.0の数値スケールでグレード評価され、グレードは0.1刻みで算出されます。
デコード、最小反射率、最小エッジコントラストは、0(Fail)または1(Pass)のいずれかに分類されます。 LVSグレードのレポートでは、これらのパラメーターにPass/Failの表記が使用されます。さらに、LVSグレードのレポートには、デコードのPass/Failの表記に加えて、デコードされた行数も含まれます。
全体シンボルグレードを取得するために、各SRP“スキャン反射率プロファイル”にグレードが割り当てられます。SRPスコアとは、7つの評価されたパラメーターの中で最も低い評価です[6.1]。
説明のために、このドキュメントではISO / IEC 15416:2016(E)、付録I [I.5]、表I.2のサンプルデータを使用します。そのサンプルの表では、バーコードから10本のスキャン反射率プロファイルラインを分析およびグレーディングした結果を示しています。
シンボルの全体グレードは、SRPグレードの計算式結果の平均です[6.1]。上記の例では、シンボルグレードは2、2、3、3、4、2、2、2、3、3の平均値で、2.6です。
パラメーターグレード(Parameter Grades)
パラメーターグレードは、ISO / IEC 15416:2016(E)改訂の主目的ではありません。これらについては、付録Dおよび付録Iで説明しています。以下の「パラメーターグレードの詳細」セクションも参照してください。補則を参考に、全てのSRP ”スキャン反射率プロファイル”にわたって取得された各パラメーターの平均値を計算することをお勧めします [D.2] [I.5]。 これが、LVS製品がグレードレポートに表示されるパラメーターグレードを計算する方法です。
上記の例のSRPグレードを参照し、各パラメーターの平均値をパラメータースコアとして使用すると、次のスコアが得られます。
この例では、最低パラメーターの平均グレードは2.9です。このシンボルの場合、シンボルのグレードは2.6です。シンボルグレード(2.6)は、最低パラメーターグレード(2.9)と同じではありません。
シンボルグレードが最低のパラメーターグレードと等しくなる例を作成するのは簡単です。実際、経験によれば、印刷プロセスでは、通常この例のようにランダムな印刷結果を生成しないため、通常は等しくなります。悪いスキャンラインがない場合、あるいは1本ある場合、最低の平均は通常、最低の平均と同じになります。このポイントは、例外が発生すること、および2つの値が等しいことを期待してはならないことを示すことです。
上記の説明は、簡単に1行にまとめられます。
average of the minimums ≠ minimum of the averages
最低値のスキャンラインの平均は、スキャンラインの平均値の最低値とは必ずしもイコールではない。
パラメーターグレードについての追加情報
ISO / IEC 15416:2016(E)付録Dは、シンボルの品質低下の原因を特定するために、シンボルグレードとともに、パラメーターグレードを使用することの重要性を明確にしています。 「低いグレード値に到る原因について追及する目的で、シンボルを検証する際には、全体的なグレードだけでなく、個々のパラメーターグレードも調べる必要があります」[D.2]。 補足Iでは、全体グレードの計算に用いられる各パラメーターのグレード平均値算出を行なう必要性を説明しています。
「…シンボルの全てのSRP ”スキャン反射率プロファイル”で取得された個々のパラメーターグレードを使用して、 局所的な変動の影響を滑らかにしながら、シンボル全体の特性を確認する為に、バーコード検証プロセスの目的である重要な追加情報を取得します。」[I.5]
上記のようなISOの仕様からの文言は、LVS検証機器群がパラメーターの平均グレードを報告する理由の基礎となっています。代替案も可能ですが、あまり役に立ちません。例えば、1本のスキャンラインのSRPの結果を表示することは、ほとんど意味がありません。 LVS検証機器は、使用されている画像キャプチャデバイス(カメラ)の最大解像度を利用しています。 その結果、バーコード全体に亘って数百の「スキャンライン」を発生させ、数百のSRP測定値が得ています。これにより、スキャン線数をバーコード高さに対して10の等距離のスキャンラインに制限するよりも、バーコードの品質をより、正確に、また完全に把握できます。 但し、ランダムに取得された1つのスキャンラインは、全体的なバーコード品質への影響がはるかに少なく、検証機器のパフォーマンスを学習しようとするユーザーに役立つ情報を提供しないことも事実です。 スキャンラインに対する各パラメーターの平均値を報告することにより、ユーザーは、どのパラメーターが最低のグレード値を示しているかをより正確に知り、判断し、ユーザーが最も適切な方法で対応できるようになります。
エッジデターミネーション (Edge Determination)
エッジデターミネーションとは、バーコードを構成するバー/スペースエレメントのエッジが切り替わるポイントが認識される数と、そのシンボルとして予想されるエッジの数とが等しいか否かを判定するパラメーターです。バーコードシンボルは、多くのバー/スペース要素で構成されています。バー/スペース要素のエッジは、バー/スペース遷移の中間点であると判断されます。隣接する要素間に複数のバー/スペース遷移が存在する場合、例えば、傷や白筋の入った当該スキャンラインのエッジデターミネーションはFail「NG」となり、全体グレードの低下に大きく影響します。
上記までの項で説明した数学的処理方法によるグレート値の変化に加えて、エッジデターミネーション パラメーターは、全体グレード値にさらに影響を与える可能性があります。 ISO / IEC 15416:2016(E)は、エッジデターミネーション結果がFailとなったスキャンラインは、そのスキャンラインのデコードパラメーターをFailとすることを規定しています[5.4.3]。 これは、そのスキャンラインのグレードに0が割り当てられていることを意味します。よって、Failになるスキャンラインにより、全体的なグレードが比例して低下します。 LVS製品は、エッジデターミネーションにより、全体グレードが低下したことを示すメッセージを表示します。このメッセージは、全体グレードが、ユーザーの予想よりも低い理由をユーザーが理解するのに役立つ情報を提供することのみを目的としています。
スキャンラインのエッジデターミネーションエッジがFail “0”になった場合でも、残りのパラメーターは測定され、パラメーターグレードに含まれます。しかし、デコーダビリティは、ISO / IECのガイドラインに従って“0”に設定されます。 LVS製品は、このスキャンラインのモデュレーションも“0”に設定します。その他すべてのパラメーター値は、ISO / IEC15416の計算方式で測定します。
上述の仮想バーコードでの10スキャンライン分析に戻り、2つのスキャンラインを追加した下の表で説明します。エッジデターミネーションがFail “0”の場合、デコードパラメーターは0に設定され、モデュレーションは0に設定され、他のすべてのパラメーターは通常どおり測定されます。
エッジデターミネーションのFailの影響を考慮に入れると、全体シンボルグレードと、各パラメーターの最低値の平均パラメーターグレードの間には、違いが生じる可能性があります。これが発生すると、エッジデターミネーションのFail、全体グレードがX%低下したことを示すメッセージが表示します。
エッジデターミネーションにより、デコードがFailとなったスキャンラインは、デコードパラメーターを“0”とする必要であり、これらのスキャンラインも全体の平均の一部である必要があります。
株式会社リベロ 廣山
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